2012年5月2日水曜日

『ラテンアメリカにおける従属と発展──グローバリゼーションの歴史社会学』刊行


装丁:大橋泉之
東京外国語大学出版会 2012年4月10日
四六判・上製・352頁・定価:2940円(本体2800円+税)
ISBN978-4-904575-19-2 C0036

この春、鈴木茂先生(本学教授)、受田宏之先生(本学教授)、宮地隆廣先生(同志社大学言語文化教育研究センター助教)の共訳で『ラテンアメリカにおける従属と発展』が刊行されました。

1995年から2002年にブラジル大統領を務め、その後のブラジル隆盛の礎を築いたカルドーゾ氏が、社会学者としてチリに亡命していた際に、歴史学者ファレット氏とともにまとめたのが、「従属論」の古典的名著として誉れ高い本書です。本書の今日的意義は、スペイン語版初版刊行(1969年)から40年以上、また欧米の主要言語への翻訳(ドイツ語版1976年、フランス語版1978年、英語版1979年)から30年以上の月日を経てもなお消えることはなく、いまもアメリカの諸大学の国際関係論コースでは盛んに用いられています。また、2009年には本書刊行40周年を記念するシンポジウムがアメリカのブラウン大学で開催され、カルドーゾ氏は本書のなかで展開している「歴史的・構造的視角」なる方法論を使い、グローバル化した現代世界における開発の問題を語りました。本書で論じられている内容が、現代においても有用な手段のひとつとなりうることを、著者自らが証明しました。

昨今の反グローバリズム・反新自由主義の思想的背景を理解する手がかりにもなる本書をぜひご一読ください。

■恒川惠市氏(東大名誉教授)の解説より:
本書は、悲観的な言説が支配的だった時代に、ブラジルを含む発展途上国の成長可能性を言い当てていたという点で、画期的な本であり、今こそ読み直されるべき書物である。さらに本書は、経済発展における国家の役割を正面からとりあげることで、市場と国家の関係についての、今日に至る論争にも一石を投じる内容を含んでいる。

■目次:
日本語版への序
ポルトガル語新版への序
初版への序
第1章 序論
第2章 発展の統合的分析
第3章 「外向きの拡大」期における基本的状況
第3章英語版補遺
第4章 移行期における発展と社会変容
第5章 ナショナリズムとポピュリズム
第6章 市場の国際化──従属の新たな特徴
結語
追記
解説 本書の今日的意義について 恒川惠市

■著者紹介:
フェルナンド・エンリケ・カルドーゾ(Fernando Henrique Cardoso)
1931年生まれ。ブラジル出身の社会学者。サンパウロ大学、パリ第9大学で教鞭をとる。ブラジル南部の奴隷制・人種関係、開発理論、軍政・権威主義体制の研究に取り組む。1993〜94年に財務相として「レアル・プラン」を主導し、ブラジル経済の安定化に成功した。1995〜2002年、ブラジル大統領を務める。

エンソ・ファレット(Enzo Faletto)
1935年生まれ。チリ出身の経済学者・社会学者・歴史学者。チリ大学教授、専門は開発理論。1973年から1990年まで国連ラテンアメリカ経済委員会のコンサルタントを務める。2003年没。

■訳者紹介:
鈴木茂(すずき しげる)
1956年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程中退。現在、東京外国語大学総合国際学研究院教授。ブラジル近現代史専攻。主な著作に「「人種デモクラシーへの反逆」──アブディアス・ド・ナシメントと黒人実験劇場(TEN)」(真島一朗編『二〇世紀〈アフリカ〉の個体形成』平凡社、2011年、所収)、「多人種・多文化社会における市民権──ブラジルの黒人運動とアファーマティヴ・アクション」(立石博高ほか編『国民国家と市民』山川出版社、2009年、所収)など。訳書にジルベルト・フレイレ『大邸宅と奴隷小屋』(日本経済評論社、2005年)、ボリス・ファウスト『ブラジル史』(明石書店、2008年)などがある。

受田宏之(うけだ ひろゆき)
1968年生まれ。東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学(経済学博士)。現在、東京外国語大学総合国際学研究院准教授。ラテンアメリカ地域研究・開発経済学専攻。著書に『開発援助がつくる社会生活──現場からのプロジェクト診断』(共編、大学教育出版、2010年)、『貧困問題とは何であるか──「開発学」への新しい道』(共著、勁草書房、2009年)など。

宮地隆廣(みやち たかひろ)
1976年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(博士〔学術〕)。現在、同志社大学言語文化教育研究センター助教。ラテンアメリカ地域研究・政治学専攻。