2011年8月1日月曜日

『アンナ先生の言語学入門』刊行



装丁:細野綾子
東京外国語大学出版会 2011年7月25日
A5判・並製・331頁・定価:2100円(本体2000円+税)
ISBN978-4-904575-16-1 C0080

 7月20日(水)、小原雅俊先生(本学名誉教授)、石井哲士朗先生(本学教授)、阿部優子さん(本学大学院出身)共訳『アンナ先生の言語学入門』が小会から発売されました。

 本書は、ポーランド生まれの気鋭の言語学者アンナ・ヴェジビツカさんによる言語学の入門書です。言語学のエッセンスを余すところなくちりばめ、世界のさまざまな言葉の用例をふんだんに駆使しながら、言語学の基本概念と研究課題をやさしく、しかもとても興味深く語っています。本学の名誉教授を務められた言語学の巨人・故千野栄一先生も、その平易な語り口で書かれた本書を大絶賛し、かねてより翻訳出版を念願されていました。その古典的な名著が、いよいよ日本語に翻訳されました。ちなみに本書が外国語に翻訳されるのはこれがはじめてです。言語学の研究者はもちろんのこと、言葉に興味をもつすべての人にぜひ読んでいただきたい本です。

■日本語版によせて:
 本書を今日の言語学の世界に位置づけるために、今一度ここで強調したい肝心な点は、言語とは、意味を伝えるために特定の音と形式を用いる、文化的に形作られた、歴史的に発展した体系である、ということです。そして私が考えるに、この「意味研究」という分野こそが、本書が最初に出版されてからここ数十年の間に、もっとも興味深く、もっとも重要な事実が明らかになった分野なのです。……本書が読者にとって多少なりとも、言語についてもっと知りたいという欲望を掻き立てるものになることを願ってやみません。

■目次:
 はじめに
 日本語版に寄せて
 訳者まえがき
 第1章 記号と意味
 第2章 音素から文へ
 第3章 言語の家族
 第4章 接触と交流
 第5章 方言、隠語、文体
 第6章 ことばの統計学
 第7章 言語のプリズムを通して
 第8章 機械が翻訳する
 第9章 「意味言語」とは何か
 あとがき

■著者紹介:
アンナ・ヴェジビツカ(Anna Wierzbicka)
 1938年、ポーランド生まれ。オーストラリア国立大学教授(言語学)。ワルシャワ大学卒業後、モスクワ大学への留学、マサチューセッツ工科大学研究員を経て、68年、ポーランド科学アカデミーにて博士号取得。72年以降、オーストラリアに在住。言語学をはじめ、人類学、心理学、認知科学などさまざまな分野を横断した研究を行っている。著書に本書のほか、『キーワードによる異文化理解 英語・ロシア語・ポーランド語・日本語の場合』(而立書房、2009)、Semantics, Culture and Cognition (1992), Emotions Across Languages and Cultures: Diversity and universals (1999), English: Meaning and Culture (2006)などがある。

■訳者紹介:
小原雅俊(こはら まさとし)
 1940年、福島県生まれ。ポーランド文学者。東京外国語大学名誉教授。著書に『白水社ポーランド語辞典』(共編、白水社)、『ポーランド語基礎1500語』(大学書林)、訳書にスタニスワフ・レム『エデン』(早川書房)、ボグダン・ヴォイドフスキ『死者に投げられたパン』(恒文社)、『文学の贈物──東中欧文学アンソロジー』(編訳、未知谷)、『ポケットのなかの東欧文学──ルネッサンスから現代まで』(共編訳、成文社)などがある。

石井哲士朗(いしい てつしろう)
 1948年、神奈川県生まれ。東京外国語大学総合国際学研究院教授。スラブ語学専攻。著書に『白水社ポーランド語辞典』(共編、白水社)、『ニューエクスプレス ポーランド語』(共著、白水社)など。

阿部優子 (あべ ゆうこ)
 1974年、鹿児島県生まれ。東京外国語大学卒業後、ワルシャワ大学研究生を経て、東京外国語大学博士課程にてタンザニアのバンドゥ諸語を研究。訳書にリシャルト・カプシチンスキ『黒檀(世界文学全集第3集)』(共訳、河出書房新社)など。