2011年4月11日月曜日

アジア文学の新たな息吹を伝える新シリーズ
〈物語の島 アジア〉第一弾
『パンダ』刊行


解説:四方田犬彦
装丁:桂川潤
東京外国語大学出版会 2011年3月31日
四六変型判・並製・328頁・定価:2310円(本体2200円+税)
ISBN978-4-904575-12-3 C0097

 3月31日(木)、本学の宇戸清治先生翻訳によるプラープダー・ユン著『パンダ』が小会から刊行されました。本書は、アジア文学の新たな息吹を伝えるシリーズ〈物語の島 アジア〉の第一弾として刊行する、タイで大きな話題をよんだ現代ポストモダン小説です。
地球に生まれ落ちたのは何かの間違いだった──。ある日突然そう悟った「パンダ」というあだ名をもつ青年は、みずからの故郷の星を探して帰還をめざします。タイのポストモダン文学の旗手による、現代社会への鋭い諷刺の精神と、人間への愛と寛容に溢れた新世紀の物語です。


 このたび著者のプラープダーさんから日本の読者のみなさんにメッセージを寄せていただきました。
「『パンダ』は私にとっては二つ目の長編小説です。私は『パンダ』を、現在生じている問題の導火線ともなった急速かつ複雑な変化の始まったタイの社会、政治の地殻変動のただ中で書きました。この小説の主人公は、目下、グローバル化が進行しているいまのタイ社会と自分の抱える問題を同時に見つめる若者です。日本の読者の皆さんは、この主人公の考えをどのように受け取られるでしょうか。それを知ることに私は感心があります」 (プラープダー・ユン)


 東京外国語大学は、東南アジア地域の言語と文化にかかわる国内きっての教育研究拠点ですが、このシリーズはその研究成果のひとつでもあります。当面は、年1、2点ののんびりしたペースで、ベトナム、インドネシア、カンボジア、フィリピンなど東南アジア地域のすぐれた近現代文学をご紹介していく予定です。将来的には広くアジア地域の文学を取り上げてゆきたいと考えています。どうぞご期待ください。

■ 著者紹介:
プラープダー・ユン(Prabda Yoon)
 1973年、バンコク生まれ。タイの作家、アーティスト。中学卒業後、ニューヨークで芸術を学び、98年のタイ帰国以降、小説、評論、脚本、音楽、デザイン、イラスト、写真など多彩な活動を展開。2002年には短編小説集『存在のあり得た可能性』で、タイで最も権威のある「東南アジア文学賞」を受賞。著書に短編小説集『鏡の中を数える』(宇戸清治訳)、エッセイ集『座右の日本』(吉岡憲彦訳、ともにタイフーン・ブックス・ジャパン)などがある。また、脚本を手がけた映画に『地球で最後のふたり』『インビジブル・ウェーブ』(ともにペンエーグ・ラッタナルアーン監督/浅野忠信主演)がある。

■ 訳者紹介:
宇戸清治(うど せいじ)
 1949年、福岡県生まれ。東京外国語大学総合国際学研究院教授。タイ文学専攻。著書に『タイ文学を味わう』(国際交流基金アジアセンター)、『東南アジア文学への招待』(共著、段々社)、『一冊目のタイ語』(東洋書店)、『デイリー日タイ英・タイ日英辞典』(監修、三省堂)、『はじめての外国語(アジア編)タイのことば』(監修、文研出版)、訳書に『インモラル・アンリアル:現代タイ文学ウィン・リョウワーリン短編集』(サンマーク出版)、プラープダー・ユン『鏡の中を数える』(タイフーン・ブックス・ジャパン)などがある。