2010年12月22日水曜日

今井昭夫・岩崎稔編著『記憶の地層を掘る──アジアの植民地支配と戦争の語り方』刊行


 このたび、本学の今井昭夫先生、岩崎稔先生編著による『記憶の地層を掘る──アジアの植民地支配と戦争の語り方』が、御茶の水書房から刊行されました。

 本書は、本学海外事情研究所が1999年から2002年にかけて開催した「戦争の記憶」をテーマとするシンポジウム(「占領の記憶をどう描くか」、「ハリウッドではないベトナム戦争」)で発表された論考を中心に纏められています。

 このシンポジウムは、日本やオランダの「占領問題」や「戦争責任」などが扱われていたために、右翼の反感を買い、怒号も巻きおこるほどの荒れ模様だったようです。しかしながら開催することに強い意味を見いだし、またそれを理解した外語大の先生を中心とした支援者たちによって、会は無事終了します。そうした波乱に満ちた企ての中から、本書に収録した各論考は生まれました。

 シンポジウムから8年。本書に編まれた論考はいまだ風化せず、現代の日本に生きる私たちに切実に語りかけます。

編集:橋本育
御茶の水書房 2010年10月28日
本体2,600円 A5判・並製 本文272頁

■帯文より:
痛みに満ちた集合的記憶を、いま精緻にときほぐす
アジア太平洋戦争期の占領と、再植民地化、抵抗と独立戦争、内戦の解放──、積み重ねられた各層の記憶からの問いを、ポストコロニアルなリアリティとして考察する。

■本書「はじめに」より:
わたしたちは、東アジアや東南アジアという言葉で表される何がしかの(……)空間をわかったつもりでいる。(……)コロニアリズムの記憶、アジア太平洋戦争期の占領と再植民地化の記憶、抵抗と独立戦争の記憶、内戦と解放の記憶、そして内的分裂と創出される国民国家の記憶などなど──(……)。本書では、そうした「記憶—内—存在」とでもいうべきわたしたちのあり方を、東南アジアという空間における歴史的争点をめぐって、具体的に光をあてようとしたのである。

■目次:
Ⅰ 「敗者」と「勝者」の戦争の記憶──アメリカとベトナム
Ⅱ 記憶の地層に分け入る──ベトナム戦争文学の深層
Ⅲ 「南洋」における戦争と占領の記憶

■執筆者・訳者一覧(*は編者):
生井英孝(いくい・えいこう)共立女子大学教授
今井昭夫*(いまい・あきお)東京外国語大学大学院教授
朱建栄(しゅ・けんえい)東洋学園大学教授
平山陽洋(ひらやま・あきひろ)
北海道大学グローバルCOEプロジェクト学術研究員
バン・ヒョンソク(ばん・ひょんそく)作家、韓国・中央大学校教授
バオ・ニン(ばお・にん)作家
川口健一(かわぐち・けんいち)東京外国語大学大学院教授
岩崎稔*(いわさき・みのる)東京外国語大学大学院教授
レムコ・ラーベン(れむこ・らーべん)ユトレヒト大学准教授
青山亨(あおやま・とおる)東京外国語大学大学院教授
大久保由理(おおくぼ・ゆり)立教大学非常勤講師
中野聡(なかの・さとし)一橋大学教授