2010年11月15日月曜日

桂川潤さんの『本は物である──装丁という仕事』刊行


 今年度の前期に開講したリレー講義「日本の出版文化」では、名だたる出版人をお招きしました。そのゲスト講師としてご講義いただいた装丁家の桂川潤さんが、このたび『本は物である──装丁という仕事』を上梓されました。
 本書は、概念的な装丁論や実践的な装丁指南書に留まりません。そこには、プロの作家や編集者でさえもなかなか知り得ない本づくりの現場が詳細にレポートされています。また、桂川さんが十数年にわたる装丁家人生のなかで出会ったたくさんの人びとの仕事ぶりや考え方、そして忘れがたい思い出についても丁寧に語られています。そうした中から本書が導きだしたメッセージは極めてシンプルです。連日のように電子書籍にかかわる言葉が飛び交うなか、その答えは、あくまでも「本は物である」ということ……。
 参考文献として小会の『身体としての書物』(今福龍太/2009年)も紹介されています。装丁・挿画・写真・本文レイアウト、すべて桂川さんご自身が手がけられています。内容もさることながら造本がとても美しく、まずは手にとって、触れてほしい一冊です。

編集:田中由美子
装丁:桂川潤
新曜社 2010年10月28日
本体2,400円 A5判変型・角背上製 カラー口絵8頁 本文248頁
ISBN978-4-7885-1210-8
■ 帯文より:
「本」は生き残れるか?
本に命を吹き込む「装丁」という仕事
その過程から紡ぎ出された装丁論・仕事論にして出版文化論
電子時代にこそ求められる「本のかたち」を真摯に問う!

■ 本書「まえがき」より:
建築は住まう者を外界から守る「保護材」であるばかりでなく、住まう者の生き方を表出し、規定する。(……)装丁においても、デザインの独創性ばかりでなく、「住まう者(=テクスト)」を生かす機能性を両立させなければならないし、同時に、「保護材」としての確固とした構造(=造本)を考慮する必要もある。(……)現在、書籍電子化に伴って起こっている事態はどうだろう。紙やインキといった物質性、いわば“身体”を失ったテクストは、もはや装丁を必要としない。書籍電子化は、装丁家の存在理由を根本から揺るがす。

■目次:
第一章 装丁あれこれ──「物である本」を考える
第二章 本づくりの現場から──「吉村昭歴史小説集成」の製作過程
第三章 わたしが装丁家になったわけ
第四章 装丁は協働作業──さまざまな仕事から
第五章 かけがえのない一冊

■ 著者紹介:
桂川潤(かつらがわ・じゅん)
装丁家。1958年東京生まれ。立教大学大学院文学研究科修士課程修了。共著書に『人権とキリスト教』(明治学院大学キリスト教研究所=編、教文館、1993年)、共訳書に『民衆神学を語る』(安炳茂=著、新教出版社、1992年)。
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