2010年10月20日水曜日

本学講師 友常勉さんの『脱構成的叛乱 吉本隆明、中上健次、ジャ・ジャンクー』刊行


 このたび、本学国際日本研究センター専任講師の友常勉さんの新著『脱構成的叛乱 吉本隆明、中上健次、ジャ・ジャンクー』が以文社より刊行されました。本書は、『現代思想』(青土社)をはじめとした各種媒体に書きためられた2001年から09年までの論考を、大幅に加筆改稿し纏めたものです。友常さん渾身の一冊です。

編集:前瀬宗祐
装幀:市川衣梨
以文社 2010年10月15日
本体 3,200円 四六判上製312頁
ISBN978-4-7531-0282-2

■帯文より:
民衆的な想像力による表現(=脱構成的叛乱)を、私たちはいかにして感知しうるのか? 吉本の〈表出論〉や中上の〈文学的企て〉、ジャ・ジャンクーの〈映画=政治的実践〉の試行をとおしてその相貌を精緻に追及した、民衆思想/芸術論の新たなる展開! 私たちの時代の〈疲労〉と〈歓喜〉。

 
■本書「序文」より:
本書は(……)具体的な民衆(被差別部落・中国民衆・農民)の〈叛乱〉についての記述を試みている。(……)〈叛乱〉は、「闘争の偶然」に従っており、「逆転するさまざまな力」、「奪い取られる権力」であり、かならずしも強くはなく、それどころか弱く、卑怯で、「自身に毒を与える支配」、「仮面をつけた別の支配」でさえある。(……)〈叛乱〉はひとつの方向をめざすわけではない。また、常に〈構成的〉であるわけでもない。

■目次:

序文

Ⅰ 吉本隆明の表出=抵抗論
 表出と抵抗──吉本隆明〈表出〉論についての省察

 〈意志〉の思考──一九七八年、ミシェル・フーコーと吉本隆明の対話
 『論註と喩』──反転=革命の弁証法
Ⅱ 中上健次と部落問題
 中上健次と戦後部落問題
 「路地」とポルノグラフティの生理学的政治
Ⅲ アジアの民衆表象
 アジア全体に現れている疲労という感覚──賈樟柯『長江哀歌』の映像言語
 震災経験の〈拡張〉に向けて
 街道の悪徒たち──『国道二〇号線』の空間論と習俗論
Ⅳ 農民論
 ある想念の系譜──鹿島開発と柳町光男『さらば愛しき大地』
 一九三〇年代農村再編とリアリズム論争──久保栄と伊藤貞助の作品を中心に

■著者紹介:
友常勉(ともつね・つとむ)
1964年生まれ。法政大学文学部卒業、東京外国語大学博士後期課程中退、博士(学術)。日本思想史。厦門大学外文学院講師、東京外国語大学非常勤講師などを経て、現在、東京外国語大学国際日本研究センター専任講師。著作に『始原と反復──本居宣長における言葉という問題』(三元社、2007年)。


(K)