2013年4月19日金曜日

『千鳥足の弁証法──マシャード文学から読み解くブラジル世界』刊行

装丁:細野綾子
東京外国語大学出版会 2013年3月15日
四六判・上製・325頁・定価:2940円(本体2800円+税)
ISBN978-4-904575-24-6 C0098

 このたび小会から、武田千香先生(本学大学院総合国際学研究院教授)の『千鳥足の弁証法──マシャード文学から読み解くブラジル世界』を刊行しました。

 本書は、批評家スーザン・ソンタグが「ラテンアメリカ最高の作家だ」と評したブラジルの文豪マシャード・ジ・アシスの最高傑作『ブラス・クーバスの死後の回想』(1881)の物語世界を、独自の視点で読み解き、ブラジル世界の本質に迫った渾身の一冊です。と同時に、2014年FIFAワールドカップ、2016年リオデジャネイロ五輪と、今後ますます注目される「ブラジル」を、人・社会・文化という観点からも考察した独創的な本です。

 ブラジル文学のみならず、ブラジルの社会や文化に興味のある方あるいは関わりの方は、ブラジルの深遠に肉薄した本書を、ぜひ手にとってお読みください。

■目次より:
プロローグ リヴラメントの丘(モッホ)で
第一章 〈X〉と〈非・X〉が織りなす物語世界──悪徳も美徳の肥やし
第二章 ブラス・クーバスによる人生レヴュー──ナラティヴに関する試論として
第三章 パフォーマンスによる「制度」への問い──劇中劇風の回想録
第四章 「非・小説」と「非・教育」の実践──ブラス・クーバスによる読書のレッスン
第五章 物語(イストリア)に託された歴史(イストリア)──「執念」の茶番(ファルス)
第六章 文体が映し出すブラジルの人・社会・文化──千鳥足の弁証法
エピローグ ブラジルのリズム
付録 『ブラス・クーバスの死後の回想録』の物語世界のイメージ図
参考文献
あとがき

【本書「プロローグ」より】
『ブラス・クーバスの死後の回想』には、ブラジルの人・文化・社会を理解するための鍵となるある重要な公式が隠されている。このように書くと、何やらあまりに大胆で大げさに聞こえるかもしれないが、私にはその公式が、ブラジルの歴史や社会ばかりでなく、「ジェイチーニョ(jeitinho)」と称されるブラジル人の要領のよい社会遊泳術やブラジルのサッカーのスタイル、そしてカポエイラ(武芸)や音楽やカーニバルなど、ブラジルの代表的な文化事象の特質を見事に解き明かしてくれるように思うのだ。

■著者紹介:
武田千香(たけだ ちか)
東京外国語大学総合国際学研究院教授。ブラジル文学・文化専攻。著書に『ブラジルのポルトガル語入門』(三省堂、2001)、『ことたび ブラジルポルトガル語』(白水社、2002)など。共編著に『現代ポルトガル語辞典』(白水社、2005)など。訳書にJ・アマード『果てなき大地』(新 潮社、1996)、シコ・ブアルキ『ブダペスト』(白水社、2006)、パウロ・コエーリョ『ポルトベーロの魔女』(角川書店、2008)、マシャード・ ジ・アシス『ブラス・クーバスの死後の回想』(光文社古典新訳文庫、2012)などがある。