2012年12月26日水曜日

本学多磨駅側の掲示板に出版会情報を掲示!

この掲示板は、東京外国語大学の取り組みやイベントの告知など、本学の情報を広く地元住民に発信するためのものです。「本学が出版している書物を通じて、本学をより身近に感じてほしい」との考えから、この秋、出版会の新刊・既刊情報やニュースを掲示することになりました。

まず、最新刊行物として、11月に刊行した『中国近代史』の情報を掲示しています。現在の中国を取り巻く情況と、中国近現代史の理解に大きな光をあてる、古典的歴史書の翻訳です。

トピックスコーナーは、出版会のニュースがあるたびにその都度情報を更新していきます。現在は、毎年春に発行している読書冊子「pieria(ピエリア)」のPDF版ダウンロードのお知らせです。ダウンロードは、小会のホームページからできます。

 定期刊行物として、本学アジア・アフリカ言語文化研究所編集の雑誌『FIELD+(フィールドプラス)』を紹介しています。年に2回(1月・7月)発行しています。毎回ユニークな特集で世界各地の文化や情勢を魅力的に伝えています。

 「pieria(ピエリア)」とは、学生の読書推進を目的に毎年春に発行し、無料で配布している読書冊子です。学内はもとより学外からも好評をいただいています。ご興味のある方は、出版会にお問い合わせください。

刊行書籍の背表紙が刊行順に並んでいます(左)。簡単な内容紹介文とともに書誌情報が書かれた刊行リストも掲示しています(右)。刊行リストはここからダウンロードできます。

本学にお立ち寄りの際はぜひご覧ください。

(後藤亨真)

2012年12月6日木曜日

『中国近代史』刊行


装丁:大橋泉之
東京外国語大学出版会 2012年11月15日
四六判・上製・272頁・定価:2625円(本体2500円+税)
ISBN978-4-904575-22-2 C0022

このたび佐藤公彦先生(本学大学院総合国際学研究院教授)翻訳による、蒋廷黻著『中国近代史』を刊行しました。

本書は、中華民国の外交官としてソ連大使も務めた中国外交史研究のパイオニアである蒋廷黻氏が、アヘン戦争から抗日戦争初期までの歴史を生き生きと描いた古典的歴史書(初版1938年)です。また、現在の中国をとりまく情況と中国近現代史の理解に大きな光をあてる、いわば共産党の歴史観の陰に埋もれた“もうひとつ”の中国近代史でもあります。

巻末には、約50ページにもおよぶ佐藤先生による大変力のこもった解題「中国近現代史理解のパラダイム転換のために」が収録されています。ここには、本書の魅力の一つとしてこう書かれています。
われわれが本書を読んで、きわめて面白く感じるのは、清朝中国の権力や交渉の地位にあった者たちが当時どのように考えていたのか、どのように意見を述べたのか、何を感じていたのかが、たいへん的確で絶妙の文章で表現されており、実に生き生きとしているからである。この絶妙なニュアンスの捉えは中国人ならではのことで、外国人のわれわれには到底及ばない芸当なのである。ここには血の通った人間が描かれている。
折しも日中関係が問題化しつつあるなか、中国近現代史の理解に欠かせない本書を、ぜひ手にとってご覧ください。

■目次より:
小序(一九五九年 啓明書局版)
総論
第一章 剿夷と撫夷
第二章 洪秀全と曾国藩
第三章 自強とその失敗
第四章 分割と民族の復興
解題 中国近現代史理解のパラダイム転換のために 佐藤公彦

■著者紹介:
蒋廷黻(しょう ていふつ)
1895年生まれ。中華民国の歴史学者・外交官。1912年に17歳で渡米、パーク・アカデミー(ミズーリ州)、オーベリン・カレッジ(オハイオ州)を卒業。コロンビア大学大学院で歴史を学び、哲学博士の学位を取得。帰国後の1923年、天津の南開大学歴史学部教授、1929年に清華大学教授・歴史系主任に就任し、中国の外交史を中心とする近代史研究に従事。1935年、蒋介石行政院長下の政務処長に就任、ソ連大使、国際連合の中華民国代表、駐米大使等を歴任し、1965年にニューヨークで死去。

■訳者紹介:
佐藤公彦(さとう きみひこ)
1949年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。社会学博士。現在、東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。中国近代史専攻。著書に『義和団の起源とその運動──中国民衆ナショナリズムの誕生』(研文出版、1999年)、『「氷点」事件と歴史教科書論争──日本人学者が読み解く中国の歴史論争』(日本僑報社、2007年)、『清末のキリスト教と国際関係──太平天国から義和団・露清戦争、国民革命へ』(汲古書院、2010年)など。訳書にピーター・バーク『歴史学と社会理論 第二版』(慶應義塾大学出版会、2009年)、ジョナサン・D・スペンス『神の子 洪秀全──その太平天国の建設と滅亡』(同、2011年)などがある。